空室が長引くと、広告費を増やして反響を取りにいきたくなります。しかし、広告費で増えるのは「物件が見られる機会」であり、見た人が問い合わせるかどうかは、物件の状態・掲載内容・条件設定が決めます。費用を使う前に確認しておきたいことを整理することで、判断に根拠が生まれます。
この記事のポイント
- 広告費が増やせるものと増やせないものの区別
- 問い合わせの流れを数値で確認する手順と視点
- 広告費増額の前に先に整えることと管理会社への確認ポイント
本文で詳しく解説します。
広告費を増やすことで期待できること、できないこと
賃貸募集における「広告費」には、いくつかの種類があります。入居が決まった際に仲介会社へ支払うAD(広告料)、ポータルサイトへの掲載費用やオプション費用、現地看板・チラシなどの販促費用が含まれます。これらを増やすことで期待できるのは、「物件の情報がより多くの仲介会社や入居希望者に届く機会が増えること」です。ADであれば仲介会社が積極的に紹介するインセンティブが高まり、ポータルへの追加費用であれば露出の増加や検索結果での上位表示が期待できます。
一方、広告費を増やしても変わらないものがあります。ポータルサイト上で物件が表示された後、「写真を見て問い合わせる気になるかどうか」は掲載情報の質が決めます。写真が暗い・情報が少ない・説明文が薄い状態のまま露出だけを増やしても、問い合わせにはつながりにくいです。また、類似物件と比べて賃料が高い・初期費用が重いという状態のままであれば、見られる機会が増えても問い合わせの率は変わりにくいです。
広告費は「届ける機会」を増やす手段です。見た人が問い合わせるかどうか、内見に来るかどうかは、物件の状態・掲載情報・条件設定が決めます。この2つを分けて考えることが、費用対効果を判断する出発点になります。
問い合わせが少ない理由が「届いていないこと」によるものか、「届いているが選ばれていないこと」によるものかで、次の打ち手は変わります。広告費の増額は前者に効き、後者には効きにくいです。この区別を確認しないまま費用を追加しても、状況が変わりにくいです。どちらの問題なのかを先に整理してから、費用を使う判断をする順番が基本になります。
掲載情報と物件状態を先に確認する
広告費を増やす前に、掲載情報の状態を先に確認する手順を取ることをお勧めします。物件が「見られても選ばれない」状態にある場合、広告費を増やしても問い合わせは増えにくいためです。また、費用をかけずに対応できる改善余地を先に見つけることにもなります。
確認しておきたいのは、まず写真の質です。室内全体・水回り・収納・窓まわりの写真が揃っているか、明るく見やすい状態で撮影されているか、原状回復後の状態が正しく反映されているかを見ます。ポータルサイトで同エリア・同間取りの競合物件と並べたとき、自物件の写真の印象が見劣りしていないかを確認するとよいです。次に確認するのは物件説明の文章です。設備・周辺環境・使い勝手のよい点など、自物件の強みが掲載文に反映されているかを見ます。仲介会社が客付けに使う案内図面の質・情報量も同様で、図面が見にくい・情報が少ない状態では、仲介会社が物件を積極的に案内しにくくなります。
管理会社に「入居希望者と同じ条件でポータルを検索し、自物件がどのように表示されているかを確認してほしい」と依頼することで、掲載上の問題点が具体的に見えてきます。スマートフォンでの検索画面も確認することを依頼するとよいでしょう。現在の多くの入居希望者はスマートフォンで物件を探しているため、パソコン上だけの確認では実態と一致しないことがあります。写真の再撮影・説明文の更新・図面の整備など、追加費用なしに対応できる改善がある場合は、そちらを先に進める順番です。
物件そのものの状態確認も、同じ段階で行います。清掃の行き届き具合・共用部の清潔感・照明器具の状態など、内見した人が「この部屋に住みたい」と感じられる状態になっているかを確認します。内見件数がある程度あるのに申込が入らない場合は、室内の状態または賃料設定に問題があるケースが多く、掲載情報の確認より先に現地の状態確認を優先する段階です。
どこで詰まっているかを数値で把握する
広告費の効果を判断する前に、「募集の流れのどこで止まっているか」を数値で確認することが必要です。ポータル閲覧数(PV数)・問い合わせ数・内見数・申込数のそれぞれを管理会社に確認することで、何に問題があるかが絞れます。数値を確認しないまま費用だけを増やしても、問題のある場所が別にある場合は状況が変わりにくいです。
PV数が少ない場合は、物件が検索結果に表示されにくい状態か、表示されていても競合物件に埋もれている可能性があります。掲載媒体・賃料設定・写真の改善が先の対応になります。業者間サイトへの登録状況も、同じ段階で確認します。仲介会社が物件情報にアクセスできているか、案内図面が近隣の仲介会社に届いているかを確認することが判断材料になります。この状態でADを増やすよりも、「物件情報が仲介会社に届いているか」を先に整えることが前提になります。
PV数はあるが問い合わせが少ない場合は、写真・説明文・賃料感・初期費用の重さが原因として候補になります。掲載情報の質と競合物件の条件との比較を先に確認する段階です。問い合わせはあるが内見につながらない場合は、仲介会社に情報が届いた後に、物件が案内先の候補として優先されていない可能性があります。管理会社が仲介会社に対して直接働きかけている状況かどうかを確認する視点が必要です。内見はあるが申込につながらない場合は、室内の状態・賃料設定・競合物件との条件差が問われます。広告費を増やして内見数をさらに増やしても、申込につながる確率が低い状態のままでは費用対効果は出にくいです。
管理会社に「現在の問い合わせ数・内見数の実績と、どのステップに問題があると判断しているか」を確認することが、判断の起点になります。管理会社がどの数値をどのように把握しているかを聞くことで、提案の根拠も見えてきます。
広告費増額が効果を発揮しやすい条件
掲載情報・物件状態・募集条件の確認を済ませたうえで、それでも反響が改善しない場合に、広告費の増額を検討する順番になります。特に仲介会社に情報は届いているが積極的な案内につながっていないという状況では、ADを増やすことが有効な手段になります。
ADの増額が効果を発揮しやすいのは、次の条件が当てはまる場合です。エリアの仲介会社が扱う物件数が多く、自物件が案内の優先順位で後回しになりやすい状況にある場合です。同エリアの競合物件のAD水準と比べて、自物件のAD設定が明らかに低い場合も、改善の余地があります。逆に、写真が弱い・賃料が相場より高い・物件の状態が競合に劣るという問題が先にある場合は、ADを増やして内見数が増えても、選ばれにくい状況は変わりにくいです。費用だけが先行する結果になりやすいため、この順番には注意が必要です。
AD以外の広告費についても、判断軸は同じです。ポータルへの追加掲載費用やオプション費用を検討する場合は、PV数がすでに十分あるかどうかを先に確認します。PV数は十分あるが問い合わせが少ない状態で露出をさらに増やしても、問い合わせへの転換率は上がりにくいです。費用を使う前に、「届いているが選ばれていない原因」を先に整理することが、費用対効果の観点から基本の手順です。
広告費の増額を検討する前に管理会社に確認しておきたいのは、「現在のAD設定と競合物件の水準を比べた評価」と、「業者間サイトへの登録状況・仲介会社への直接的な働きかけの実績」の2点です。費用を追加するのか、掲載内容を整えるのか、別の条件を調整するのかを管理会社と整理してから判断することで、費用の使いどころが明確になります。
まとめ
広告費を増やす前に確認しておくことは、「物件が届いていない問題か、届いているが選ばれていない問題か」を区別することです。広告費が効くのは「届ける力」の問題に対してであり、「選ばれる力」は物件の状態・掲載情報・条件設定が担います。
掲載情報と物件状態の確認を先に行い、PV数・問い合わせ数・内見数・申込数の数値でどのステップに問題があるかを把握してから、広告費増額の判断をする順番が基本です。管理会社に現在の数値と問題の場所を整理してもらったうえで、次の打ち手を選ぶことが、費用を使う前の準備になります。広告費の増額を否定するのではなく、確認できることを先に整えてから判断することで、費用の効果が出やすい状態が整います。
